しあわせになる不動産投資
そこでは役割の分担と責任の明確化が必要になります。
不動産投資ビジネスは不動産から金融にわたる幅広い業務から構成されており、その中で活躍するプレイヤーの業務も多種多様です。
すべての役割を受託者単独で担うのが、最も効率的であると判断すればそうすることも可能です。
しかし、これだけの幅広い業務を一人で担うことは大変困難で、現実的ではありません。
そこで役割の分担が必要になり、それぞれの成果を問うために、責任の明確化が不可欠となるのです。
ある一定の業務(例えばビル管理、開発業務など)を任せられたプレイヤーは、その業務で実績を上げることを求められます。
決して安閑とはしていられません。
それぞれの業務に必ずといってよいくらい、その業務を代替できるプレイヤーがいます。
そことの競争に勝てないようでは、報酬を引き下げられたり、場合によっては解任されてしまいます。
その競争に勝ち抜くた捌こ必要なものが専門性です。
各プレイヤーは自らの強みが何であるかをしっかりと認識したうえで、専門性を磨く必要があります。
このように書くと抽象論のように受け止められがちですが、実際に不動産投資ビジネスですでに一定の実績を積み重ねている企業をみると、必ず自らの強みが何であるかを認識しています。
そのキーワードは、当然ながら企業によって異なり、デベロップメント(開発)であったりネットワークであったり、証券化であったりするわけです。
さて、これまで説明した役割分担と責任の明確化、専門性の強化という流れは、結果的に不動産事業を機能ごとに分化させることになります。
不動産の投資・保有機能(Investment)、預かった資金を不動産で運用して最大限の利益を上げるアセットマネジメント(Asset Management、略してAMと呼びます)、モノとしての不動産の管理(テナント付けをするリーシング業務を含む)をするプロパティマネジメント(Property Management、略してPMと呼びます)、開発業務を請け負うデベロップメント(Development)、投資対象となる不動産をモノとして調査するデューデリジェンス(Due Diligence)などが、その代表的なものです。
このような不動産事業の機能分化のことを、不動産の機能の束を分解するという意味でアンバンドリング(Unbundling)と呼びます。
もっとも、これは機能が分化するということなので、実際にはある特定の1社が複数機能を担うこともあるでしょう。
もともとは不動産会社1社で担ってきたこれらの機能が、すでに説明した環境変化のなかで投資家から最大限の成果を求められ、結果的に分化していく点が、不動産投資ビジネスの特徴の一つとなっています。
不動産投資ビジネスのプレイヤー(機能)それでは不動産投資ビジネスとしては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
そもそも不動産は、すべての企業や個人にとって不可欠なものです。
加えて、不動産投資ビジネスが不動産と金融の両方に関係していること、不動産事業のアンバンドリング(機能分化)によって多くの専門業務に分化していること、投資家の要請に応えるために第三者による客観的なデータ(不動産鑑定、市場調査、投資インデックスなど)に基づいて運営されていること、これらがこのような多彩なビジネスが生まれる背景となっています。
なお、それぞれの機能についての詳細は後章で説明しますので、ここでは全体概要の把握にとどめます。
不動産投資ビジネスに必要なもの不動産投資ビジネスに参入して成果を収めるためには、前にも説明した通り、自らの強みを明確に認識したうえで、専門性を高める必要があります。
しかし、不動産投資ビジネスのある部分の機能を担うにしても、全体の構造がどのようになっているかを知ったうえでビジネスを遂行しなければ、的外れの動きになることもありますし、何より市場競争に打ち勝つことができなくなる恐れがあります。
不動産投資ビジネスでは、分化しているそれぞれの機能が有機的に結合して、初めて成果を生み出せるからです。
例えば、現在の想定投資利回りが8%なのに、 10%以上の利回りでなければ投資家から資金を集めることができない場合を考えてみましょう。
その場合、8%の利回りで満足してくれる投資家がいないかどうか探してみるのも一つの方法でしょう。
しかし、もしそのような投資家がいなければ、建設費や管理費用を削減して不動産自体の利回りを高めるか、金融機関からの資金調達を増やし、投資利回りを引き上げることを考えなくてはなりません。
さらに根本的なところまで戻って、その不動産をもっとうまく活用する方法がないか、改めて市場調査をして、事業計画を再検討することが必要となるかもしれません。
また、不動産の開発期間や資金調達期間の面でも工夫を要するかもしれません。
不動産招泌男ビジネスの時代、このように一つの課題を解決するために、分化しているあらゆる機能が関係してきますので、それぞれのプレイヤーが、投資ビジネス全体の中における自らの役割をしっかりと認識したうえで、共通の目的に向かって業務を遂行していく必要があるのです。
そこで本書では、不動産投資ビジネスの全体像を把握するために必要な知識を、ポイントを絞って整理することとしました。
具体的には、不動産投資ビジネスに最低限必要な項目を、次のように体系づけています。
客観的なマーケット分析(市場調査)不動産のモノとしての把握(デューデリジェンス)明確な投資基準に基づく投資(投資指標の設定)最大限の成果を上げるための投資戦略(ポートフォリオ運用など)不動産投資のツールとして重要な証券化戦後しばらく続いた土地神話が崩壊し、不動産ビジネスは新しい時代を迎えようとしています。
土地の値上がり益だけに頼ることのできた時代は終わり、これからは各プレイヤーの創意工夫による付加価値勝負の時代に入ります。
まさに、 「地価」頼みの時代から、 「知価」勝負の時代に入ったといえるでしょう。
それでは次章から、具体的な投資ビジネスの内容について説明していきます。
不動産の世界でアセットマネジメント(Asset Management :資産管理)というと、一般的にはある不動産や不動産ファンドの管理を任されて、投資家の効用を最大にするように運営する業務のことを指します。
その中には、今ある不動産の効用を高めることはもちろん、不動産を新たに取得すること(アクイジション: Acquisition)や処分すること(デイスポジション: Disposition)、投資資金の調達(ファイナンス: Finance)といった業務も含まれることが多いようです。
従ってアセットマネジメントを実行するアセットマネジャーは、資産運営の戦略を策定したり、不動産管理の実務を委ねるプロパティマネジャーをコントロールするのに加え、投資家や金融機関、不動産売買の相手方と交渉したり、報告のためのレポートを作成する任務を負っており、その業務範囲は極めて多岐にわたっています。
概念的にはこの通りなのですが、実際にアセットマネジメントとして何をやっているかというと、個々のケースでかなり違いがあるようです。
上記の業務範囲をすべて担っている場合もあれば、不動産管理を受託しているプロパティマネジャーとそれほど変わらない業務を担当している場合もあります。
業務範囲が明確でないのは、もともと所有と経営が一体だった日本には、アセットマネジメントという確立された業務がなかったこと*が影響しているようです。
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